希望が閉ざされたら、本を開こう。

生き方を問い直す読書感想文

『「三十歳までなんか生きるな」と思っていた』(保坂和志著、草思社、2007年)

ふだんお世話になっている方が、「時間論を書かれている小説家の本がありますよ」と貸してくれた一冊。

とっても面白くて、一気に読み切ってしまった。

著者の保坂さんは小説家だが、書かれている内容は哲学そのもの。

それも単に論理を重ねるのではなく、「論理的ではない自分の心の動きを解明する」かのような思考が展開されている。

中でも僕が気に入っているのは、「プー太郎が好きだ!」の章。

「規則正しく労働することに本質的に向いていない人が、世の中には必ずいるものなのだ」

なんと力強い言葉だろうか!(笑)。

彼は親しいプー太郎友達らに嫌われたくないと言うが、その気持ちにもとっても共感する。それは僕自身が半分以上プー太郎だからなのだが。

「自分が人間として大切にされていると感じることができていないから自分以外の人間を大切にすることができない」

「『人間』というのはトータルな存在であって、分解されてしまったらもう『人間』ではない。症例というのは人間を分解した観点だ」

といった彼の人間観は、近代社会が犠牲にしてきたものを、近代社会が生み出してきた闇を浮き彫りにする。

保坂さんの展開する時間論もとっても面白い。

「時間について考えるには、混乱や不明確さを敢えて許容するタイプの方が有効なのではないか」

という保坂さんの考え方に僕も同意する。

保坂さんのトークライブの動画がユーチューブなどに上がっているようなので、関心のある方は観てみてはどうだろうか。

「三十歳までなんか生きるな」と思っていた

「三十歳までなんか生きるな」と思っていた