希望が閉ざされたら、本を開こう。

生き方を問い直す読書感想文

『緑の哲学 農業革命論 自然農法 一反百姓のすすめ』(福岡正信著、春秋社、2013年)

 

緑の哲学 農業革命論: 自然農法 一反百姓のすすめ

緑の哲学 農業革命論: 自然農法 一反百姓のすすめ

 

何もしない運動

人類の未来は今、何かを為すことによって解決するのではない。
何もすることは、なかったのである。
否! してはならなかった。
強いて言えば〝何もしない運動〟をする以外にすることはなかった。
今まで人類は多くのことを為してきたが、何を為し得ていたのでもなかった。
一切は無用であった。
この書は〝何もしない運動〟の一環である。

自然農法を通して、社会と人間の近代化を痛烈に批判する本書。

著者によれば、

「期待した巨大都市の発達や、人間の文化的、経済的活動の急激な膨張が人間にもたらしたものは、人間疎外の空しい喜びであり、自然の乱開発による生活環境の破壊でしかなかった」。

自然に仕える者としての百姓こそが、人間本来の生き方であるとする彼の思想は、東日本大震災を経て、さらにその輝きを増しているように見える。

「自然界では、すべてが関連し何一つ不要なものはなく何一つ孤立したものもない。自然には必要とか不必要という言葉はない、すべては同一体の一部にしかすぎない」

「自然の生命は、動物(人や家畜)と植物と微生物(土)の間を次々と循環しているにすぎない」

だがこのような感覚を、都会の暮らしの中で感じることは難しい。

だからこそ、人々はいま、田舎との交流や移住という形で、自らの生命性を回復させるためのきっかけをつかもうとしているのかもしれない。

もちろんそれは、自然とのつながり、他者とのつながりを回復することと同義である。

なんとなく「田舎で農業をしたい」と感じている人々にとっては、その意味を具体的に認識させてくれる、バイブル的な一冊になりそうだ。

緑の哲学 農業革命論: 自然農法 一反百姓のすすめ

緑の哲学 農業革命論: 自然農法 一反百姓のすすめ