希望が閉ざされたら、本を開こう。

生き方を問い直す読書感想文

『愛蔵版 まんが道』第1巻〜第4巻(藤子不二雄著、中央公論社、1986年〜1987年)

これを読んでいるあいだは、本当に青春時代に戻ったような気持ちになってしまった。

けれども、その青春時代の思いは今もやっぱり残っていて、主人公である満賀と才野の姿を、自分に重ね合わせずにはいられなかった。

自分が決めた道を進むことの喜びだけでなく、その厳しさも描かれていて、まさに自分の夢を追う人にとって必読の書だと思う。

そういう夢を追う人、特にモノ作りを生業にしようとする人を励ましてくれる名言がたくさん出てくるのもいいところだ。

「なんということだ!人気絶頂の手塚先生が、400ページの本のために千ページも描いていたとは!」(1巻45頁)

これを読んで我が身を恥じたクリエーターは、僕を含めどれだけいたことか(笑)。

そして満賀の母が言った次の言葉。

「人生は一度しかないんだからあとであの時ああしておけばよかったと後悔しないようにすることよ!」(1巻263頁)

これはまさに僕の母がよく言っていた言葉そのもの。今でもどこかで、この言葉が僕の心の支えになっている気がする。

あと、なんといっても共感したのは、主人公の一人である才野が、会社を一日で辞めてしまったところだ。才野は次のように言い切った。

「やっぱりおれは勤め人にはむいてないってことがわかったからだよ……。いや!それがはっきりわかったんだ。人にはある職業につくのに適性と不適性というものが先天的にあると思う!おれの場合サラリーマンには不適格なんだ!不適格だということがわかっていてムリして勤めていてもいずれはやめなきゃならない!だったら少しでも早い方がいいと思って決心したんだ!」(1巻796頁)

僕はこれを読んで、エレファントカシマシ宮本浩次が、レコード店のレジの仕事をして速攻でクビになった、というエピソードを思い出した(笑)。

それにしても……

(※この先はちょっとネタバレ的な部分があるので、本書をまだ読んでいなくて、楽しみにしている方はここまでにしておいてください!)

……二人が原稿をごっそり落としてしまったところは本当にびっくりしてしまった。

けれども、僕自身、これまで多くの人に応援してもらいながら、その期待を裏切ってきた経験があるので、全く他人ごとに思えなかった。

もう漫画をあきらめようとする二人を、兄貴分のテラさんが叱りつけた次の言葉は、もう涙なしには読めなかった。

「ばかっ!きみたちのまんがに賭けた情熱はそんなにアマッチョロイものだったのかーっ!!きみたちはまんがに命を賭けたのではなかったのかーっ!!それなのにたった一度の失敗でかんたんにあきらめてしまうのかーっ!!たしかに今度の失敗はかんたんにゆるされることではない!でもきみたちがどうしてもまんがへの夢をつらぬきとおす気持ちがあれば土下座してでも編集の人たちにあやまって今度だけはゆるしてもらうことだ!もしきみたちがほんとうに反省し編集の人たちがきみたちの実力を買ってくれていたらきっと今回だけはゆるしてくれると思う!きみたちの今とるべき道は……それしかない!!第一きみたち今まんがをやめたら……あといったいなにがあるんだ!?」(4巻464〜467頁)

まんが道』は学生時代から気になりつつ今まで読んでいなかった漫画だったが、このタイミングで友人から借りることができて本当によかった。

僕は果たして「何道」を歩もうとしているのか自分でもわからないが(笑)、やりたいことをやっていこう決意を新たにした。

そのためにも、ぜひトキワ荘的な場があるといいなあ。

愛蔵版 まんが道 (第1巻)

愛蔵版 まんが道 (第1巻)

 
愛蔵版 まんが道 (第2巻)

愛蔵版 まんが道 (第2巻)

 
まんが道 (第3巻)

まんが道 (第3巻)

 
まんが道 (第4巻)

まんが道 (第4巻)